身体に侵襲を伴う美容医療施術においては、身体への影響をゼロにすることはできません。
その影響が、一般に施術に伴うリスクであることもあれば、手技にミスがあったことにより生じたものとして医療過誤にあたる場合もあります。
そして、一般的に生じうるリスクの範囲か、医療過誤に該当するかの判断は非常に難しいことがあります。
医師から見て「ベストな経緯、結果とはいえなかった」という場合でも、必ずしも「過誤」「ミス」と判断されるものでもありません。
美容医療機関において、「医療過誤では?」という事態が生じた際の対応について設営します。
1 初動
施術や患者の状態によって生じる症状は様々ですが、まずは、患者の安全確保をすることが第一です。
自分たちの医療設備では十分な検査・対応が難しいと判断した場合には、速やかに他の適切な機関を受診できるように主体的にかつ真摯に動くことが必要です。
そのうえで、それまでの経緯の事実確認を行い、なるべく詳細かつ具体的に記録に残すようにしてください。
診療録の記載があまりにも少ない場合には、裁判などにおいても実際に心証が悪くなるという影響は否定できないものがあります。
機器や薬剤についても具体的な名称、使用量などを残しておきます。
また、関わったスタッフなどからも経緯について確認をし、記録をするようにしてください。
過失がある、ない、と即決をすることをせず、これらの資料が充分に揃ってから慎重に判断をするようにしてください。
2 患者・家族への説明
患者や家族への説明については、粛々とまずは事実を伝えることが必要です。
過失の有無についての検討をおざなりにしたまま、必要以上に責任を逃れようとする対応することや、逆に謝罪しすぎる対応も避けるべきです。
症状発症の理由として考えられること、今後の見込み、他院での治療等に必要な情報提供などの協力を行っていくこと、を説明します。
原因が明確になる前に、安易に「責任は負います」「できるだけのことはします」などと約束しないようにしてください。
3 過失の有無の検討
資料がそろい、事実関係の把握をしたところで、顧問弁護士への相談や、加入している医療賠償保険会社に連絡をして対応方針を検討していきます。
弁護士は、これまで裁判で争われた事例を基に法律的観点から、過失の有無の検討を致しますし、保険会社は、加えて、カルテなどの資料に基づき医学的観点からも手技上の過誤の有無について検討をします。
これらの検討結果に基づき、対応を判断していきます。
(1)過誤があったことを前提として対応する場合
相手に対して、金銭的賠償の必要性や、必要があるにしてもその金額等を具体的な費目ごとに検討していきます。
時には、軽微な症状であったにも関わらず、患者が「他院に通院するため」といって高額なタクシー代を要求される、「仕事を休む必要があった」等として高額な休業損害を請求してくる場合などもあります。
さらに「失敗したことで、うつ病になり仕事を辞めざるを得なかった」などの主張がでることもありまう。
どこまでが施術と関連がある損害となるのかも、慎重に検討することになります。
(2)過誤がなかったことを前提として対応する場合
患者に施術後何らかの症状が出たとしても、一般的なリスク
5 対応を誤ったことでトラブルが拡大する例
(1)杜撰な診察
患者が施術後の体調の不調などを訴えているにもかかわらず、医師の診断を促すこともなくスタッフが「まずは様子を見てください」などと説明して対応しないことは、患者のストレスを増加させるだけでなく、後に重篤な症状に発展した場合には重い責任を負うことにもなりまません。
まずは医師の診察を早期に促すようにします。
(2)情報隠し・虚偽説明
医療過誤の可能性があると認識しえたにもかかわらず、「問題ない」「手術の影響ではない」「本人の体質による」などとして、患者への不十分な説明しか行わなかった場合や、更に、虚偽の説明をしたような場合には、それ自体が不法行為となる可能性もありますので、絶対に避けるべきです。
その場で患者
また、安易に患者を「クレーマー扱い」してしまったことで、大きなトラブルになってしまう例もあります。
過誤の有無に関わらず、丁寧な対応を心掛けることでその後の交渉の進み具合をスムーズにすることができます。
6 弁護士に依頼するタイミング・メリット
「医療過誤かも」と感じる場面や、患者から「ミスでは?」などの疑問が発せられた場合には、ただちに弁護士に相談してください。
初動で行うべきこと、また、絶対にやってはいけないこと、をアドバイスいたします。
また、感情的になっている患者に対して、具体的にどのような対応をするか、対話の内容や、メール、ラインなどでの連絡文書についてもアドバイスいたします。
さらに、クリニックのスタッフでは対応が難しい場合や、現場の負担が大きくなってしまうような場合には、すぐに弁護士に対応を代わることも可能です。
これらの弁護士の介入により、初動のミスを防ぐことができ、その後の影響を最小限にすることができます。また、対応するスタッフの負担も大きく軽減することができます。
7 医療過誤のトラブルは、突然発生し、現場にも大きな動揺が走ります。
また、その対応に労力を割くことによって業務全般にも影響を与えかねません。
顧問弁護士の存在により、トラブルが起こった際にも慌てることなく対応ができ、その後の対応の多くを弁護士に任せることができます。

